2012年2月3日金曜日

『チェ・ゲバラ伝』 三好徹

人が革命家であり続け、革命家として純粋に死ぬ。人として最も困難なこの主題に挑み、退くことを知らなかった稀有の革命家。革命のロマンティシズムの体現者、チェ・ゲバラの情熱的生涯を克明に描く。98年刊の新装版。

以前に映画「28歳の革命」「39歳別れの手紙」が上映されていた頃に本屋に平積みされていたのを何気なく手に取りました。偶然の出会いでしたが、非常に面白い本でした。著者の三好徹は直木賞作家だというのも最近まで知りませんでした。

印象的なのは、なぜゲバラがラテンアメリカに蔓延するテキトーさを超越できたかをキューバを含む中南米でしっかりと取材したと思われる著者にも謎であることです。キューバの学校でもチェのようになろうと教えられているにも関わらず、キューバ人からはゲバラ的克己心は感じられません。「キューバ人は服ではなく本を買うようになってほしい」というゲバラの崇高な願いも虚しく、キューバ人は少ない給料をせっせとためて目一杯お洒落を楽しんでいるようです。


2012年2月2日木曜日

コマンダンテ

ハリウッド屈指の社会派監督オリバー・ストーン自らインタビュアーをつとめ、アメリカと国交を持たぬ隣国、キューバの最高指導者であり、20世紀最後の革命家フィデル・カストロに真っ向から挑む、1対1の真剣勝負。同志チェ・ゲバラとの悲しい別離や一触即発の緊張が全世界に拡がったキューバ危機の真相、そしてヴェールに包まれた私生活に及ぶまで、容赦ない質問を投げかけるオリバーに対し、ナイキと映画「タイタニック」が大好きなどお茶目な一面をみせつつ、ある時は真摯に答え、またある時はうまくかわすカストロとの会話の攻防。COMANDANTE(司令官)であり続けるカストロ議長の本当の姿に迫るドキュメンタリー。

オリバー・ストーン監督の質問に対してフィデル・カストロが言葉に力をこめて話しています。きっと革命前から今に至るまでずっとそうしてきたのでしょう。特典映像のオリバー・ストーン監督のインタビューで、ブッシュJrは決して人の目を見て話さず非人間的であるが、カストロは一対一の人間として話してくれるというようなことを言っています。まさにそういう印象を持ちました。

挿入されるハバナなどの風景は、革命当時でも今でもほとんど変わらないので、旅行して街を実際に体験してから鑑賞すると印象も深まるのではと思います。

この映画はアメリカでは上映されなかったそうです。また、アメリカのAmazonで売られているDVDはリージョンコード2(日欧)のものしかありません。北米のリージョンコード1のDVDは製造されていないようです。言論の自由がないなどとキューバを避難しているアメリカの自由はこの程度のものということでしょうか?